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優しさ


昨晩、寝る用意をしようと 階段を下り、リビングへ向かった。 風呂の灯りが点いていたので様子を見に行くと おばあちゃんが床を拭いていた。

異臭が鼻をつき、便の掃除をしているとわかった刹那 こんな場面を見られたくないだろうな。と思ったが 上着と靴下を脱ぎ、どうしたん?と声を掛けた。

風呂場と洗面所に便が散っていて 自分でやれるから大丈夫。と言うおばあちゃんに、シャワーで身体を流すように言い 雑巾で辺りを拭いた。

汚れ物を濯ぎ、おばあちゃんの身体についた便も奇麗に落とし 大丈夫か。と問うと おばあちゃんは、ありがとう。ありがとう。と繰り返し応えた。

寒いから、下を穿いて布団に入り。と言うと あかん。あかん。と言い、壁にもたれかかり 排便した。

情けないなあ。汚いなあ。と言うおばあちゃんに俺は 仕方無いやん。と言った。 他に何も言葉が思いつかなかった。 歳だから仕方が無いのか 済んだ事は仕方が無いのか 自分が口にした言葉の意味がわからないまま、周りを掃除した。

おばあちゃんは気丈な人で 自分の幸せより他人の幸せを願う人。 何も望まず、与える人。 その血は、おかんが濃く継いでいる。 その生き方に美徳を見出し

俺もそういう風に生きたい。と 昔の俺は人に優しかった。 常に笑顔でありたかったし、人を笑わせる事が何より好きだった。 たぶん 人と接するのが好きだった。 今は真逆に居ると思う。

人を笑わせる事もなくなったし、与えるものも何も持ち合わせていない。 きっと こういうのを孤独と言うんだろうと考える。 笑っている人を見るのは好きだけれど、 もしも そこに自分が居る事で笑えない人が居るとしたら そこに居ない方が良い。と、そういう発想を持つようになった。

こんな場面を見られたくないだろうからって 独りで便を拭くおばあちゃんを見なかった事にしようか。だなんて ほんの一瞬でも想像した俺に、優しさは無い。

その夜、おばあちゃんの ありがとう。という言葉を何度も何度も聞いた。 何も有り難くない。 今まで与えられたものの深さを想うと、こんな事 何も有り難くない。

その存在が稀だから、有り難い。 普通の事を普通にしただけだから、ありがとうと言われても 上手く返す事が出来なかった。

心に穴が開いたのは 老いに絶望したからではない。

情けなくも思わなかったし、困りもしなかったし、床を汚した事に怒ったわけでもない。 おばあちゃんならきっと、俺がそういった類の感情を抱いた。と発想しただろう。 あるいは、それら全ての想いを抱いたと思ったかもしれない。 そう想像すると、何も掛ける言葉が見当たらず ええがね。これで奇麗になったやん。とだけ言った。 そして ありがとう。と言われた。

おそらく 普通の人なら ごめんなさい。と言ったと思う。 でもおばあちゃんは ありがとう。としか言わなかった。 喜怒哀楽のどれにも属さない感情が湧き それを上手く処理できなかったから 今も処理できていないから 心に穴が開いた気がしたんだと思う。

今日1日その事ばかり考えていて 芯から人を想って生きている人だから ごめんなさい。と言わなかったんだろうな。と思う事にした。 なぜなら ごめんなさい。と言われていたらきっと 俺は、謝らんでいい。と言っていたと思うから。 そうなったら 2人とも情けない気持ちになってしまっていただろうから。

おばあちゃんは感謝の人。

今日は昨日のリベンジで、水挽きをしようと思っていたけれど ついおばあちゃんの様子が気になり、化粧だけ掛けて直ぐに帰った。 感謝の人は、モリモリ晩御飯を食べていた。 どうやら下痢は治ったようだ…

昨晩は、布団に入ってから色々と考え込んでしまい 気が付いたら朝になっていて 今のこの気持ちをどう処理すれば良いのかわからないままだったが 久々にこの曲が聞きたくなり、YouTube で探して聞いていると 何故か、今更涙が出てきた。

泣いたのは…いつぶりだろう

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ヒュッゲな生活を提供すべく三重県伊賀市に工房を、東京に営業所を構え活動しているユニットです。


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