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無陶


私が黒いものを好んで身に纏うのは 私は私が黒い性質の人間だと知っているからで 逆に白を纏ってみるのも悪くないかもしれない。と発想する余地は無い。

その時間が長ければ長い程 昇華するはずである。という幻想を抱いているからだ。

どうもこんばんは。motomanです。

何時 耳にしたのかは忘れたが " 本当のロックとは 音楽をやらない事だ " というセリフがあった。

私は音楽に明るい人間ではないし、ロックの真髄というものを考えた事もない。 まして 劇中のそのセリフも、冗談めいた状況で発せられたものであったが その理屈はなかなか評価出来るものだ。と感じた事を覚えている。 と言うのも 伊勢守の理念を受け継いだ石舟斎の兵法に通ずるところがあり 真剣勝負の上で、相手の命の尊厳をも重んじ 無刀に辿り着いたその精神性に近しいものを感じたからだ。

2つ の岩石が重なった形。

陶芸という道の上 そういった類の精神性は何処に在るのだろうか。と考える。

伊賀で掘らせて頂いた原土。

木槌で大きな塊を割ったものの中から 良いと思える形のもののみを選別し、ノミで少しずつカを与えて 原土の持つ荒々しさを崩さぬよう、慎重に削り出す。

それぞれがそれぞれの表情を持っていて 最も良い景色だと思えるところを最優先に。 殺さぬよう 活かす為に削り出す。

自然とその形と成っているよう 最後に 2つ に割ると 香合が出来上がった。

全体の大きさを基点とし 何に転換し得るだろうか。と 手の内で角度を変え、ただただ原石を眺めている時間の方が長いかもしれない。

行き先が決まったなら 衝撃に弱い原土が割れてしまわぬよう、丁寧に裡を刳り出すと ぐい呑みが出来上がった。

人の手が 土という素材を殺してしまってはいまいか どこまで活かす事が出来るのだろうか そもそも " 美しさ " を表現するにあたり 人の手が介在する余地はあるのだろうか その意味は 価値とは。

そういった想いに耽ってしまう。

未だ見ぬところではあるが 美しいと感じる空を超える空を人の手が作れないのと同義で 人の為に作られる器という形は自然発生し得ない。という理屈が成り立つような気がする。

日本人独特の感覚とされる " 見立て " とは そのあたりに源流があるのではないか。と考える。 究極的な所有欲と言えるのかもしれない。

自然の一部を切り取ったような景色を 土と炎を扱い " 手中の宇宙 " として具現化する事が 陶芸という道の醍醐味なのかもしれない。

自分が作りたいものを成すにあたり 表現するに適しているから選んだ素材なのか 惚れた素材を地盤とし、その上に自分を投影するのかとでは 大きな差があるように思う。

この手のものは正直なところ 自分でもよくわからない。

形は自分の手が動いた通りに変えられるけれど 磁土という、素材が持つ良さを引き出せているのかどうかが 甚だ疑問だからだ。

狙いと試行錯誤は確かに在る。

以前 成形したものとの大きな違いは 切り出した鋭角な稜線と稜線の間の面を 指でなぞったか否か。 ただそれだけの事。

着想は 滑らかな筆使いをする書家の作品を観た事。 切り出した面を下から上へ 流れが天に昇っていくよう、指でなぞった。

これを作ったのは 紛れも無い ヒトである。と 手仕事の跡を遺してみよう。と思った。

全体的な形も、数をこなすと ある程度の傾向が得られた。

成形方法も 作っている人間も同じ。 出来上がる形だけは違っている。

確かな事は 土の乾燥具合で表情が違ってくる。 陶芸をしている人であれば 誰もが知っている事。 勿論 私も周知の事実ではあったが これを成形し終えるまでに私が知ったこの土の性質は それ以上でも以下でもなかった。

どれが良いものでどれが悪いものである。という判断はし難い。 同じ土で同じ人間が作ったとて 違う形が出来上がるのだから。

数字や言語を扱うようになったヒトの芯に在るのは 曖昧なものである。という事。 味にもなれば不安要素にもなる、紙一重のこの感覚が 自分の中心に据えられているのだから 朧げに愉しくもあり 恒久的に哀しくもなる。

では 無機的な形ではどうだろう。と こういった形も作ってみた。

どこか心が落ち着いたのは 良いと思えるものを生あるうちに具現化したい。という欲に囚われているから 幾何学が平穏を象徴しているように見えたのか。 わからない。

全ては曖昧で 私が次に身に纏う色が黒であるかどうかですら危うい。

でも時々は それ以外も身に纏ってみないと。 見逃してしまっているものがあるかもしれない。 そういう発想もある。

そういう発想もある。

これは 私より永く永く、陶芸の道を歩み続けている 先人の口癖である

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